「私も手伝うっ!!」


そう言いながらはしゃぐ僕の彼女。


「あの…さ、ゆづ。
分かってる?
ゆづ…一応安定期とはいえ妊婦さんなんだからさ。
軽い仕事だけに…しておきなね?」


「分かってる。」


「しばらくは軽い仕事ないから…
BGM代わりにピアノでも弾いておきな?」


優しく彼女を抱き寄せながら…耳元で囁く。


「もうっ…///和っ…
私、耳弱いんだからっ…」


顔を真っ赤にしていう…その態度。

恥ずかしいのか、か細い声。

そんなんでそんなこと言われたら…余計イジめたくなるでしょ?


「もう…
まだ懲りないの?」


片口角を上げて、相変わらず、顔を近づけたまま、言ってやる。


「和っ…
わかったからっ…」


「さすが。
僕の子猫ちゃんは物分かりがいいですね?」


触れるか触れないかくらいのキスをしてから、僕は作業に取り掛かる。


まずは…ピアノをステージの端のほうに移動させる。
下手側のほうだ。


「ゆづっ!!
お願い。
ちょっとそのピアノで何か弾いてて?」


「はーい。
任せて!!」


クスッ。

やっぱり、音色で分かる。
音に…性格って出るんだね。

純真で…真っ白で。

透明感のある…そんな音。

まあ、「エリーゼのために」弾いてるから、余計にそう感じるだけかもしれないんだけど。


「ゆづ!!
ありがとうっ!!
降りていいよ。」


彼女にピアノを弾かせることで…

確認したかったんだ。

調律具合と…

音響効果を。


「会場全体に、バッチリ聞こえるよ。
大丈夫っ!!」


自信満々にいうアルプスさん。


「あの…さ。
お前が通訳って…心配なんだけど…」


アルプスさんの耳元で不安げに言う。

バシッ!!


「いったい!!
…痛いよっ!」


僕の背中を、思いきり叩いてきたアルプスさん。


「大丈夫だよ!
僕を信じろっ!!
パピーと悠月ちゃんのためなら…
どんな協力もね…惜しまないの。」


そんなことをドヤ顔で言うから…
何か、彼なりの考えがあるのだろう。