次に入ってきたのは、この病院の院長さんだった。

奈留の母、朱音さんも、流産して…中絶して…

職場の同僚から中傷を受けたことを知る。

さらに、この院長さんが…奈留を産んだときの分娩の担当者だったという。

日本にある、佳奈ちゃんが出産した病院。
そこで…奈留も生を受けたらしい。


なお、院長さんはその病院とこの場所…

両方の病院で院長を務めているという。


話が終わると、院長さんが奈留にある写真を手渡していた。

まだ俺と奈留の子供が生きていた頃の…エコー写真だという。

それを大事そうに抱きしめる彼女。

ホント…流産しても…一時的には母親だったんだなって…
実感する瞬間。


だけどそんな温かい時間も…すぐに壊れてしまうんだ…


「大変だっ……
君を…奈留ちゃんを…殴った男が…自殺した…」


入ってきたのは…若い男。
まだ20代前半だろうか。

白いYシャツに赤と白のラインが入ったニットのカーディガンを着て、カーキのズボンにブーツを履いている。

顔立ちはすごく整っている。
目も大きいし。

モデルになれそうだ。


「そんなっ…」


相当驚いている彼女の代わりに、気持ちを代弁してやる。


「どうやら彼は、自分自身に保険金をかけていたみたいね。」


「あ、それは知らなかったな。
さすがメイ。
仕事が早くて助かる。」


「……当然よ。
バカの考えることなんて、たかが知れているわ。
……あ、初めまして。
彩の母の宝月 冥です。」


そう言って、一礼する彼女。


さりげなく毒を吐くところは、オーナーにそっくりだな。
オーナーは…母親似かな。スタイルいいし。


自分を傷付けた男を罪に問えないと知った奈留は、また泣き出してしまった。

そんな彼女に、オーナーの両親は、

「絶対、何かの罪で裁判にかけてあげるからね。」


と言って、捜査に向かった。

オーナーの父親、FBIカガク捜査官だったんだ…
しかも、芸能人…

オーナーの母親、検事だったんだ…


いろいろな意味で、ビックリだった。