暖かい、モコモコのワンピースにパーカ、ルームソックスに身を包んだ私は、すぐに雅志の元に向かった。

「ただいま。」


今、無理に笑顔を作ったのが、自分でもはっきり分かった。


「おかえり、奈留。」


「ご飯何がいい?ハッシュドビーフとかたまにはいいかとは思ってるけど。

オレ、こんな高度なのは自信ないなぁ。」



「じゃあもう、一番手頃なハンバーグでいいと思うな……」



同じハ行の食べ物だけれど、今はハンバーグの気分。


「一緒に作れるし。ね、ハンバーグがいいな…」


雅志を上目遣いで見上げながらそう言ってみる。



「仕方ないな……そんな可愛い目で見られちゃ、さ。
わがまま聞いてあげるしかないでしょ。」




そう言って、調理開始。



ああっ!卵の殻がちょっと白身に入っちゃった………



玉ねぎ、みじん切りの大きさとか厚さ、バラバラ……

生地、厚すぎた……
火が通りにくいよ……(涙



お昼のことが少なからず精神状態に影響してるのか、あまり上手くはできなかった。



私よか雅志のほうが上手い。



私、女子なのにな………

何とか完成。


形は不恰好だけれど、雅志と食べたからかな?予想よりは美味しかった。



「ちゃんと美味いよ?奈留のも。
そうやって卑屈にならないの。」


頭を優しく撫でてくれる雅志がかなりキリストくらいの神の存在に見えてきたわね。

何か神々しいのよね……こういうときの雅志。




夕食を食べ終えてしばらくすると、今度は雅志がシャワーを浴びてくるというから、大人しく部屋で待っていた。


一人になると、また昼間のことを思い出してしまう。


涙であっという間に視界が蜃気楼のように霞んだ。



「ふぇっ……」


小さなダイヤモンドが決壊したかのように、とめどなく透明や黒色をした粒があふれでてくる。



後ろに感じた体温に安心して、また粒が溢れる。



「雅志……」



私の冷えきった心を暖めてくれる、人間カイロだ。



「何で………」




「今の奈留の精神状態じゃ、独りにしたら絶対泣くだろうなって思って。」


やっぱり、雅志はちゃんと分かってくれてた。



「ダメなの……
思い出しちゃって………」


「全部分かってるから、それ以上言わないでいいよ?」


彼の表情や、私の身体の抱き締め加減などが一斉にそう言っているように感じた。





「なるべくずっと一緒にいるから。」




今夜は今までにないくらいピッタリ密着して、雅志と一緒に寝た。