サクラドロップス


そうして


その夜からアタシとツバサくんは

サクラを間にはさんで、ひとつのベッドで眠った。


今日のヤゲンは少し焼きが甘かったとか、ヒラメのエンガワはやっぱり美味しいとか

果物屋のオヤジはヅラに違いないとか、明日の夜はカレーにしようとか


そんな、たいして問題にもならないコトを

夜明けまで話しながら。


でも

アタシと、ツバサくんの間には

水っぽいものは、何もなかった。


アタシが悲しいとツバサくんは優しくアタシを抱きしめるけど、そっと繊細な指で髪を撫でてくれるけど

それでも・・・

それから先に、進むことは決してなかった。


アタシが、年上だからとか

ツバサくんが、年下だからとか

そんなことが問題なのではなく。



アタシはやっぱり、どうしてもツバサくんが誰だか想い出せなくて

一日、一日、日が過ぎていくごとに切なさは募るけど

でも、そのことについても

アタシはツバサくんに何も聞かなかったし

ツバサくんもアタシに何も言わなかった。


ただ、今、2人が此処にいて

目が合えば笑い合える

それが・・・すべてだったから。