1分でも、1秒でも速く。
そんなに離れた距離でもないのに
アタシの気持ちは電車よりも速く飛ぶ。
ねぇ
ツバサくん
まだ、いかないよね?
アタシを、置いて
どこにも消えたり、しないよね?
だって
まだアタシはツバサくんから
ふわふわの玉子焼きの『コツ』を教えてもらってないし
固い玉子焼きしか作れないままだし
ツバサくんの好きなツクネも
まだお土産に買って帰ってないし
それに、もしツバサくんがいなくなったら
サクラだって寂しくて
きっとまたゴハンが食べられなくなって
押入れから出て来なくなってしまうよ?
カタタン・・・と、揺れる電車の中で
アタシは駅に着いた時に少しでもはやく降りられるようにドアの脇に陣取り
窓の外に流れる景色で時間を計る。
何分後に到着するかなんて解っているのだけど
時計を見るより、見慣れた建物が増えるのを見ている方が、安心出来たから。
あの本屋の赤い屋根を過ぎて
あの高台にある白いマンションを越えたら・・・
キキィ・・・と、いう電車のブレーキ音で
アタシはポケットの中にあるsuicaを手に取ると
ドアが開く途中で身体を斜めにして
誰よりも速く、電車から降りた。


