サクラドロップス


・・・と、アタシが迷っている内に、安藤はパソコンを立ち上げて、手元の書類に目を通し始めた。

そして・・・

「ユキさん、これ、エリカちゃん担当の書類じゃないですか?」

と、言って、パラパラとページをめくった。

「用事があるって言ってたから」

アタシは、安藤とは目を合わせずに。


自分で言うのもなんだけど、アタシのブラインドタッチは、はやい。

総務の何でも屋みたいな仕事に比べたら営業事務の決められた業務をこなすのも簡単で。

だから正直、エリカちゃんの解らないトコロを教えて待っているよりも、今日みたいに、丸投げされた方が楽なのだ。

週末になるとまとめて取引先の企業から仮の伝票がメールで届いたりして

それなりに忙しくはなるのだけれど

それでも、ネイルアートを気にしながら打たれるキータッチの速度に苛立つアタシは、お願いされた書類は笑顔で受け取れる内に受け取るようにしている。

「・・・用事って、合コンのコトですか?」

「食事会でしょ?なんで途中で帰って来たのよ。あの店は鍋の〆のラーメンが美味しいのに。アタシは雑炊派だけど」

「ユキさんがいるって聞かなければ、行きませんでした」

「思った以上に書類が多かった。ワルイ」

・・・うそ。

最初から、行くつもりなんかなかった。


今日、昼に公園で、エリカちゃんから聞いた言葉が頭をよぎる。