いつもは十時過ぎに帰るのが当たり前だったから気がつかなかったのだけれど···
この時間に商店街を通ると、色々な匂いがするものだったのね。
お惣菜屋さんからは、そのまま食卓にのせて食べたい、ふくふくとやわらかい家庭の匂い
角のお肉屋さんの店先からは、美味しそうな焼き鳥の香ばしい匂いが。
この魅惑的な匂いと、脂の焼けるパチパチとした凶暴な音の魔力から逃れる方法はないものかしら。
アタシはまんまと
いるかどうかもワカラナイ人の分までお金を払い
MaxMaraのスーツにはどう考えても素敵なアクセントにはなりえない、ツルツルとした白い焼き鳥の袋を手にしていた。
恐るべき商店街。
朝は誰も彼もがピリピリしてうるさいとしか思えない人の流れも、この時間だと不思議と穏やかな波に感じる。
まだ七時も回ってないのに、既に顔を赤くしてご機嫌なサラリーマンのオジサンも、買い食い途中のにぎやかな高校生も、アタシと同じ焼き鳥の袋を持った可愛い幼稚園生と、上品で優しそうなオカアサンも。
みんな少し微笑んで、優しい顔をしているように見えた。
もしかするとアタシの顔も、そんな風に見えるのかしらね。
自分では、解らないけれど。


