サクラドロップス


「だったら・・・だったらもう話しかけないでよ!そうよ、アタシは今、1秒でもはやく帰りたいわ。アンタと話しているこの時間さえ惜しいの。だから消えて!」

午前零時。

それでも、まだこの辺りの人影は少なくない。

普段のアタシなら、絶対にこんなコト言わない。

何も、不必要に安藤を傷つけるコトはない。

けれど・・・今は。

唇から飛び出す刃物のような言葉を、あえて止める気になれなかった。

「・・・ゴメン、なさい」

小さく、呟く安藤。

けれどアタシは、それを無視したまま。


信号が、青に変わって

チラチラとアタシと安藤を盗み見する視線を振り払いながら、駅へと急ぐ。

なのに安藤は、何も言わずについて来た。

「聞こえなかったの?アタシもうアンタと話すコトないし」

アタシは安藤の顔を見る気も起きず、suicaを取り出しながら。

安藤は地下鉄なので、帰るつもりなら改札が別なのだ。

「送ります。マンションの前まで。もう、この時間ですから」

お財布を取り出しているらしい安藤。

「だから話したくないって・・・」

「ええ、ですから、オレの存在は無視してくれて結構です。オレが勝手にユキさんを心配して、無事に部屋に入るのを確認したいだけですから」

アタシの言葉を、はじめて安藤は遮ると

バカみたいに、ニコッと、笑った。

「・・・アンタ、バカ?勝手にすれば」

アタシはわざとらしく溜息をつくと、安藤から目を逸らし、ホームへと向かった・・・