「…葵、起きたの?」 痛む頭を労わりながら ゆっくりゆっくり 一階へと降りると、 いつもなら「葵ーっ、遅刻するわよーっ!!」 なんて怒鳴るお母さんが、 塩らしい。 「起きるよ、そりゃあ。 え、今日って学校休みだっけ?」 わざとおどけてみせる。 でもお母さんは眉を顰めて。 「今日ぐらい、休んでもいんじゃない?」 ――きっと、もう一生 聞けないであろう、優しい言葉。 だけど。