「これ…あんたの?」

瀬戸内は、無言でうなずく。

あたしは一度視線を落としてから、両手でノートを差し出した。



「サンキュ」

軽くそう言って、精一杯の笑顔を作る。



「いや…」

あいつは、うつむいて微かに笑った。

大好きな笑顔に、また胸が苦しくなる。

あんたのこと、こんなふうに思うのは、最後にしたい。

泣いてるつもりはないのに、あいつの笑顔がボヤけていく。

あたしがもっと素直になれてたら、違う結果になってたんだろうか。



「瀬戸内…
今まで、ありがとう」

最後くらい、ちゃんと笑顔で『ありがとう』って言いたい。

あいつに微笑んで、あたしはゆっくりノートから手を離した。