「みなさん、いいですか?
先週の授業で説明した通り…」

先生の声も、耳に入らない。

斜め前に座る瀬戸内の姿が見えないように、まっすぐ黒板に体を向けているあたし。

それでも、シャーペンをサラサラ鳴らしてノートをとる瀬戸内の気配はなんとなく感じる。



「では、班のみんなと協力して進めてください」

先生が、黒板にチョークをコトンと置く。

どうしよう…
瀬戸内のほうに振り返りたくない。



「ビーカーって、どこにあるんだっけ?」

可愛らしい声で、瀬戸内に話しかける唯香ちゃん。

「あたし、取ってくるよ」

あたしは机に片手をついて、スッと立ち上がった。