「ねぇ、幸大君。

なんで最後のサイコロの出目を見ないで組長さんは帰してくれたの?」

皐が言う。

「タンブリング・ダイスって奴だよ。」

「それ、さっきも言ってたけど、どういう意味?」


「賭けの根源とも言える行為だ。


実はサイコロの出目がなんであろうと関係ない。

例えその出目で皐と睦月の運命が決まるとしてもな。


重要なのは…

サイコロを振れるかどうか。

皐と睦月という存在を背負った時にサイコロがはたして振れるのか…


それが本物の賭けだ。


負けだと諦めサイコロを振らなければ負け。


しかし、奇跡の大逆転を信じてサイコロを振った瞬間に俺の勝ち。」


「へぇ…」

皐が感心する。


「ねぇ、

もし、あの時襖を閉めなかったらどうなってたと思う?」

睦月が言う。

「どうもしねぇよ。

俺が勝つ。」

「根拠は?」

皐が言う。


「お前らは俺のこと好きか?」


「うん。

好きだよ。」

皐が言う。

「私も好きだよ。」

睦月も言う。



「お前らは自分が好きになった男のことを信じれないのか?」


「そうじゃないけど…

根拠としては…」

「まぁ、いいけど。」

皐と睦月が言う。