「あ、やばっ。教科書忘れた!!」



 隣がやけに騒がしいと思ったら、


 次の授業の教科書を探していたらしい…



 「渡瀬さん、渡瀬さん」



 呼ばれてそちらに顔を向けると…



 「教科書、見せてくれないかなぁ?」



 まるで、捨てられた子犬のような瞳で


 こちらを見ていた……。



 『……いいよ』



 あんな瞳で見られたら断れるはずがない。