「渡瀬さん、料理得意なんだ?」



 宮田が声を掛けてきた。



 『……うち、片親なの。母親が遅くまで仕事してるから…家事はあたしの仕事』


 「えっ―‥」



 宮田の顔が一瞬で驚きの表情に変わった。



 …どうせ、同情されるんだ。



 今まで、父親がいなくて”可哀相”と、何度も言われてきた。


 あたしは父親がいなくても、母親がいるだけで十分だった。


 …だから、同情なんてして貰いたくない。



 「…すごいね、渡瀬さんは」


 『へ?』



 何がすごいのか分からなくて、首をかしげる。



 「俺だったら、絶対に出来ないから」


 『――っ』



 宮田は、相変わらずの笑顔で言う。