今まで底辺スケーターだったんだから、少しぐらい夢見させてくれたっていいじゃんか。男心がわかってねぇ奴だな。


「草太君は? 一枠は貰えたんでしょ」


「残念ながら補欠。アピールは出来てたけど、ジャンプの種類が選考基準に引っ掛かったみたいでさ」


選考会だけの結果を見れば十分一枠は貰える所にはいたのだが、トリプル三種類ということで弾かれたようだった。残念だ。


「じゃあ、一樹が一枠返上して草太君に渡せば問題解決ね!」


「なんでもかんでも突っ込むと思ったら大間違いだからな」


優希の言うことなすこと全部に突っ込んでたら日が暮れちまう。適度に受け流すのが丁度良い。


あーあ。今日は朝から気分爽快の素敵な一日になれると思ったのになぁ。


優希のせいでほんと台無し。なんとかしてほしいもんだぜ。


「今期のフリーって持ち越しだよね。ショートはなんだっけ?」


「ショート? ショートは『sing sing sing』だけど?」