銀盤少年


【決意と始まり】


お正月も過ぎて、世間が落ち着き始めた今日この頃。


とある喫茶店。中に入ると既に待ち人は席に付いていて、手招きをしながら俺を呼ぶ。


「遅れてすみません」


「大丈夫だよ。それよりごめんね、サーシャ君も忙しいのに呼びつけちゃって」


「いえ、俺は大丈夫です。タクさんこそ大丈夫ですか? 明日には発つんですよね」


来週には世界選手権がある。


今が一番大事な時期なのに、わざわざ俺との約束を果たす為にやって来てくれたのだ。


「ちょっとした息抜きだよ」


タクさんは柔らかく微笑むと、頼んでいたコーヒーを口にした。


俺との約束なんて後回しでいいのに。というか、数ヶ月前のことをよく覚えていたなと驚いたくらいだ。


俺が日本に戻って来た時に、朝飛と冗談半分でお願いしたこと。ずっと覚えてて、しかもこうして守ってくれるなんて……。