銀盤少年


曲のテンポが変わる。


それを合図に手を叩き、一番の見せ場であるストレートラインステップシークエンスへ。


ケンちゃん曰く「難しいことはやっていない」と言っているが、嫌味にしか聞こえない。


俺もケンちゃんも本格的なプログラム作りや振り付けは初めてだったから、ステップシークエンスも得意なステップとターンを多めに使った見た目重視の構成で組んだだけだけど、ケンちゃんの“得意”は頭一つ抜き出ている。


一つのステップでも、どの組み合わせを選ぶかで難易度が変わってくる。


前向きと後ろ向き、インエッジとアウトエッジ、右足と左足と、組み合わせ次第で八種類の同じターンが存在するため、得手不得手が存在する。


でもケンちゃんはかなりの変態(良い意味)で、得意なターンは八種類全ての組み合わせを完璧にやりこなすことが出来るのだ。


レベル要素という意味では難しいことをやっていないかも知れないけど、技術的にはかなり難易度の高いことを平然とやっている。


要素は少ないけど、魅せ方が上手い。音楽の特徴を捉えているから、スピード感が音楽ともシンクロしていて、自然と胸が高鳴り高揚感が溢れてくる。


これだけアピール出来れば十分だ。