それだけ練習意欲があったというか、今思えばプロ意識が強かったんだろうけど、大人すぎる子供という感じが不気味で、俺を含め周りの連中も狼谷とは一線を引いていた。


しかもあいつ、いつの間にか不良化してるし。目つき悪いし。怒らせたら絶対勝てねえ。


ここは旧友のヒロに任せるのがベストなのだ。


優希には「一樹、人はそれを“ヘタレ”と呼ぶんだよ?」と失笑してたけど、相手は不良なんだから恐いもんは恐いんだよ。怪我したらどうすんだよ。


何事も穏便に済ませるのが一番。自らトラブルを巻き起こす必要などない。


それにヒロのイケメンキラキラオーラにかかれば、狼谷だって牙が抜けて妙な気など起こさないだろう。


そう思っていたが、簡単には世の中いかないもんだ。


「二階堂はいるか」


放課後の教室に戦慄が走る。


金髪不良の一匹狼が、俺達の教室に現れたのだ。


扉の前で腕を組みながら、視線は既にヒロを捉えている。