銀盤少年


お兄さんの話をしているなど露にも思っていないであろうカズが戻ってきた。


入念に柔軟を済ますと、草太君と共にリンクに上がって滑り始める。


日本で初めて会った時より見違えるほど滑りに伸びが出ていて、部活での練習の成果が目に見える。


影でケンちゃんに「かき氷製造機」なんて酷評されていたけど、今じゃ大分マシになった。


草太君もスケート歴の割りには随分上手い方だ。


センスはカズ以上。後二年早くフィギュアスケートと出会っていたら……なんて想像は野暮ってもんか。


「で、今日はどんな御用で? うちのクラブに入りたいとか?」


こちらから切り出そうと思ったら、先に宮本コーチから話を振ってきた。


見学と世間話をしに来たのではないことはわかっているらしい。天然っぽい人だけど、案外鋭い。


「いえ、カズのことで気になったことがあったので」


「一樹が?」