銀盤少年


「ジャンプに優れた選手という評価をされていた……って、弟のお前なら知ってるか」


狼谷の武器なら年不相応な表現力の高さなら、兄貴の武器は年不相応なジャンプスキルの高さだった。


中ニでフリーに3Aを二発入れられたのは、当時ジュニア最強と言われてた朝飛と兄貴ぐらいだ。


今の俺とほぼ同じ構成を兄貴と朝飛は三年前に完成させていた。そう思うと、やっぱ化物だったんだなぁと改めて実感する。


「こっから先は俺の主観だが」と前置きをして、狼谷は続けた。


「冷静な判断力と実行力を持っていた珍しいタイプだったな」


そう感じたきっかけは、共に派遣されたJGPSのベルリン大会でのことらしい。


フリー当日の朝の公式練習。兄貴はこれまでにないくらい絶不調だった。


俺はその場にいなかったけど、日本から発つ前から余り調子が良くなかったのは知っていた。


それでもショートは見事にまとめ上げていたけれど、狼谷が言うにはその日はショート以上に最悪のコンディションだったようだ。


普通の選手なら、この時点で勝敗を喫していた。