「なあ、お前から見た兄貴ってどんな選手だった?」
狼谷健太郎のライバルにして元全日本ジュニアチャンピオン。鷲塚一哉。
俺と狼谷はあまり交流がなかったけど、兄貴と狼谷は色んな大会に派遣されていたりしたから、俺よりは関わりがあったはずだ。
俺が知らない兄貴。日本代表として戦う兄貴。
それをこいつは知っている。短い間だったけど、その姿を見ていたはず。
前から聞いてみたかったんだ。第三者の目から見た鷲塚一哉という選手のことを。
「一哉のことを?」
怪訝な声色が返って来る。
こりゃ無理かと諦めたが暫しの沈黙の後、狼谷は大げさに溜息をついて天を仰いだ。
当時のことを思い出そうとしているようで、黙って記憶の整理を見守る。
「正直余り話したことはないが……」
狼谷はゆっくりと言葉を紡ぐ。


