『何……ざけた事……ってんだよ』

「え?」

 俺は駿兄を見た。

『簡単に死ぬとか言うなよ!!』

 突然駿兄が大声を出したので、俺は少し後ろに下がった。
 駿兄は、今までに見た事もない真剣な目をしていた。

『生きてる意味の無い奴なんて居ないんだよ!! 死んでいい奴なんて居ないんだよ!!』

 俺は驚いた。

「駿兄……」

『――――っ』



「泣いてるの……?」

 廊下に、ポタリ。
 涙が落ちた。

 朝日が涙で反射して、涙がきらきら輝いて見えた。

「ごめ……ん」

 気付くとそんな言葉が出ていた。

『ん…………』

 駿兄は床に座り込んだ。

「駿兄?」

 駿兄は動かない。

「どうしたの?」

 俺は駿兄の体を軽く揺らした。


『…………』

「寝てる……」

 はぁ、と溜め息が出た。




『あ、やっぱり寝ちゃったか』

 部屋から優兄が顔を出した。

「やっぱりって――」

『長い付き合いだし、予想つく』

 ……凄いなぁ。

『でもさ、駿の言う通りだぞ?』

 優兄が言った。


「あ……」

 駿兄も、優兄も、
 “死”を身近に体験した事があるんだ。

『こいつは……人一倍“死”に対して敏感なんだよ』