「淳も今までありがとう」

 俺は淳の方に向いた。

『何、今から死ぬみたいな事言ってんだよ……』

「お前こそ……泣きそうな顔、してんなよ」

 俺は笑おうとしたが、上手く笑えなかった。


『お前何するつもりだ?』

 もう一人の俺が、困惑した様子で言った。

「死ぬ」

 口にしてしまった。
 その言葉を。

『…………は?』

「俺ともう一人の俺が一緒に死ねば、こいつは一人にならない……」

『お前まじで言ってんのか? 俺……お前に今まで……』

「そうだな」

 思えば
 もう一人の俺に出会ってから、
 体乗っ取られるわ
 勝手に小テスト受けるわ
 後頭部殴られるわ
 幽霊に会っちゃうわ
 あだ名が発情期になるわ
 ………………

 何かいろいろあった。

 平凡で地味に歩んで来た今までが、一気に壊れた。

 ろくな事が無かった。

 全部、このもう一人の俺の所為だと思ってた……。

 でも、

「違う、よな?」

 お前は何も悪くなかったんだ。