『やめろ!! やめろ!!』

 俺はやめない。

『嫌だ!! 消えたくない!!』

 俺はやめない。

『一人は嫌だっ!!!!』

 俺は――

「一人……?」

 手を止めた。

『お前みたいな奴にっ、平々凡々に暮らしてきた奴に……ずっと一人だった俺の気持ちなんか分からねぇよ』

「………………」

 平凡で、地味で……
 特別な事も無く退屈に生きてきた……。

 それは
 凄く幸せな事なのか?

『いつも思ってた……俺がお前だったら良かったのにって』

「っ!!!!」

 何故か、良心が痛んだ。
 多分この手で魂を潰してしまえば……こいつは消える。
 俺もその内消えるが。

 潰してしまったら……こいつはずっと一人のまま消えてしまうのか?

 愛も、友情も、家族も、知らぬまま。
 触れる事も無いまま。

『真琴……?』

 淳と真奈美が、水の中に手を入れたまま動かない俺を心配そうに見る。