引っ越して来たばかりの殺風景な夕暮れの部屋にうなだれる俺と、押し入れから出てきた謎の女が佇む影が、つたって長く伸びていく。

……何時までも、痴けている訳にも行かない。

信じがたい出来事に直面すると、人は笑うしかなくなると言うが、それがよく分かったような気がする……。


「え~と…聞きたい事は山ほどあるんだけど…とりあえず君の名前は?」


気が付けば俺は、謎の女の名前を聞いていた。

何故か、つくも神と言われて不思議とすんなり信じられる自分に驚きつつ俺は、夕暮れの殺風景な部屋に、佇む彼女を見上げていた。


「わだすの名前は、津雲 皐月 (つくも さつき) っていうんだば…兄さんの名前はなんでいうんだが?」


彼女に名前を聞かれた俺は、まだ自分が名前を名乗っていなかった事に気付いて、頭を指先でポリポリと掻きながら答える。