「さっちゃーーっんっ!!!
 あちきにも、あーんして食べさせて欲しいニャっ!!!
 颯太ばっかりズルイんだニャーッ!!!」

「めっ! だべ!
 美猫さは悪さすたんだべ!
 ちっとくれぇ、ガマンするといいんだなや。颯太さ、あーん、だべ。」


皐月さんは、美猫に めっ!と指を立てて 叱ってからまた俺にほぐした秋刀魚を箸に取って食べさせてくれる。


「ズルイズルイズルイーーッ!!!
 颯太なんか、颯太なんか、大っ嫌いだニャーッ!!!
 颯太なんかに、さっちゃんは、絶対渡さないんだニャーッ!
 フシャーーーーー!!!」


バリバリッ!


「いって!!! 引っ掻きやがったな! 美猫っ!」

「颯太の馬鹿ーっ! 覚えてろっ! だニャッ!!!!」


美猫はそう 捨て台詞を残して、縁側から塀に飛び乗って素早い動作で夜の闇へと消えていき、拗ねたまんま去っていってしまった。

嵐みたいなヤツだな…あの化け猫……。

俺は、そう思いながら、美猫が消えさった方角にぽっかりと浮かんだ月を見ていた。