皐月さんにしてみたら、親切心からやった事なんだろうけど。


「やっぱり颯太さも、わだすが見えっでも気味が悪いと思うだげなぁ……。わだすはずっと一人ぼっちで、誰にも長い事、存在を認識されずに、生きできただべさ……。わだすら妖怪は所詮、人間様を怖がらせるだげの存在なんだべや……」

「……最初はそりゃあ、びっくりしたけど、俺は皐月さんを気味悪いなんて思ったりしてないよ。」

「本当なんだが?わだすの事気味悪いとが思っでないっで…わだすは、妖怪なんだべ?人間と違うイキモノなんだべや?」

「うん。まあ見えてしまうものは仕方がないし、人間だとか妖怪だとか言う前に皐月さんは、皐月さんなんだろう?」

「!!!」そう俺に言われた彼女は、驚いたようにつぶらな紅い瞳を見開いて俺を見たあと、さらにボロボロと涙をこぼして泣きだしてしまった。

「さっ、皐月さんっ?!ごめっ…俺なんか、いけない事言って傷つけちゃったとか?!」

「ちが……ちがうんだば……わだす……うれしぐっで!
 ……そんな事を言っでくれだ人間は初めでなんだがっ…わだす…わだすっ……!」

わあわあと子供みたいに泣き出してしまった皐月さんを、俺は躊躇いつつも抱きしめて落ち着かせるように、背中を摩ってやる。

泣き過ぎて、ゴホゴホと咳込みだした彼女は妖怪だって言うけれど、今時の人間なんかよりよっぽど人間味があって人間臭いと思って、何と無く笑みが零れてしまう。