「りおさんは若の気持ちにはまるで気づいてませんよ」

「そんくらいわかってる」

気づいてないから傍にいられるんだが。

俺が惚れてると知れば逃げ出してもう戻ってこない気がする。

曖昧な関係だ。



「いつか誰かがりおさんを奪うかもしれませんよ?それでもいいんですか?」

「………」


そんなことは許さない。
そういう男が現れたら闇に葬る。



「まったく厄介な恋ですね」

「天下の大神の跡取りが泣ける」

「………」



人の気持ちも知らんで。

ひとを好きになったこともないおまえらに何がわかる?



「心外ですね。わたしに好きなひとぐらいいますよ」

「あ?」



その時だ。

りおが片手に電話を持って顔を出した。


「あのね。奏さん。明日みんなで打ち上げするんだけど行ってもいい?」

りおの嬉しそうな顔を見て断れるはずもない。


「早めに帰る約束なら。送り迎えは俺がやる」

「わあ、ありがと」