「修二が気に入ってくれるような帽子作るから、期待して待っててね」
 私がそう言った時、修二の方からカメラのシャッターのような音が聞こえた。
「修二、カメラ撮ったでしょ? カメラのシャッター音が聞こえたんだけど」
「撮ってねえし。空耳じゃないの?」
「嘘だ。カメラどこに隠したの?」
「本当だって。ほら、カメラ無いだろ?」
 そう言って、修二は手を上にあげた。ベッドの中などを色々探したが、カメラは見当たらなかった。
「本当だ。ゴメンね、修二」
「だから本当だって言っただろ。彩香、お詫びのキスして」
「仕方ないな」少し照れながら、私は修二の唇にキスをした。
 二人は長い間キスをしていた。時間を忘れてずっとキスをしていると、修二は私のことを自分の体から離した。
「彩香、大好きだよ」
「私も大好きだよ」そう言って、再び唇を重ねた。
 そんな幸せな日々が続き、修二が病気にかかっていないことさえ忘れるほどの幸せな日々だった。そんなある日、私は手作りの帽子を天高く掲げた。
「修二、やっと帽子できたよ。案外早くできちゃった」
「もう出来たのか。もしかして、手抜きしたわけじゃないよな?」修二は笑いながら帽子を手に取った。
「手抜きなんかしてないし。修二のために夜遅くまで頑張ったんだから」
「分かってるって」修二は帽子を被りはじめた。
「帽子ピッタリだよ。彩香、ありがとう」そう言うと、彩香の頬に軽くキスをした。
「そういえばさ、修二っていつ外出許可下りるの?」
「分からないな。でも、体調は悪くないし近々外出許可下りると思うよ。まあ、絶対遠出はするなって言われると思うけどね」苦笑いしながら修二は言った。
「遠出なんてしなくていいよ。前みたいにあの河原で寝転びながら話して、公園でゆっくり歩きながらデートすれば良いじゃん」
「そうだな。今までずっと彩香のことを寂しい思いさせてきたし、できるだけ外出許可を下してもらえるように治療も頑張るよ」
「そうだよ。修二が勝手に私の前からいなくなるから、修二がいない間ずっと辛い日々だった。でも、もう今はこうして毎日修二と会えてるんだから、それだけで幸せ」
 私が照れながらそう言うと、二人は手を繋ぎながら眠りについてしまった。