椿さんと並んで歩く。

「私の家、この角を曲がったらすぐだよ。」

「本当に近いな。」

だから言ったのになぁ。

「ありがとう椿さん…あっ。」

「ん?」

「本当の名前はなんですか?
先輩なら敬語…使わないと…」

私が勝手に呼んでるだけだから、本名を知らない。

「…椿でいい。敬語も要らない。
急に変わると落ち着かない。
その方が慣れているから楽だ。」

「…確かに私、ずっと椿さん、椿さんって普通に呼んでた。」

また私は笑った。


「きっとね、今笑っていられるの、椿さんのおかげだよ。」

「…そうか?」

私はそうだよ!と元気に言う。