「お兄さんがちょっとお金貸して欲しいって言うから貸してあげたのに、中々返してくれなくてねー」
舐め回すような視線に冷や汗が出てくる。
「お兄さん、ちゃんと返すからちょっと待ってくれって言っててさ」
どんどん私に近づいてくる黒川と名乗った男の人から、足がすくんで逃げれない。
「それで…私に何か」
「お兄さんに逃げられたら困るから、お嬢ちゃんが人質になってくれる?」
クイッと顎を持ち上げられ、笑っていない目を見て身体が震えた。
「まあ、拒否権はないけど」
手を離されたと思えば、後ろからまた知らない男の人が出てきた。
「さて。新居へ向かおうか」
「え」
男の人に右腕を後ろに回して抑えられ、そのまま背中を押されるように歩かさせられる。
「離してっ…」
離れようとするも、男の人の力には勝てなくて逃げられない。
「騒いだら…ダメだぞ」
玄関の扉を開ける前に、振り返った黒川の目は光なんてなくて、単純に怖いと思った。

