まだまだ肌寒い春にならない季節。
小鳥のさえずりと共に朝がやって来る。
自室のベッドで眠る青年――加賀俊はまだ朝が来たのを知らない。
神楽崎町新崎市。
都会に近く、都会といえない中都市に位置する。
交通機関はそこそこあるが、田舎の雰囲気があるこの町は学園と広い市民公園が自慢らしい。
もちろん俊もその学園に通う一人だ。
学園の名は私立桜芽学園。
都会からかも受験生が集う、この町では一、二を競う程人気がある学園だ。
俊は今年卒業を控えているが、学園に思い出はない。
行事なんて彼には意味のない祭なのだ。
学園にはあまり行く意味もないが、せめて卒業はしないといけないから渋々通っていた。
「んぅ……」
俊は二、三度寝返りを打ち、薄く瞼を開いた。
「朝?」


