「ふあ〜」




小さな優しい風を、私の大きなあくびが吸い込んだ。



ぽかぽかする人工芝の裏庭







寝ころがりながら手足をぐっと伸ばす





ん?





右手になにかが触れた






目を瞑ったままこれはなんだろう、と捜索してみた




人の髪・・・?



ここには普段人が殆ど来ない


ましてや今日は入学式




重たい体を起こしまだ眠たい目を擦って、ふっと髪のあるほうをみた




大きな手




太くないのにしっかりとした腕





私よりもずっと広い肩






血管が少しでている首






薄いピンクの唇





スッとしていて綺麗な鼻







茶色くてちょっとつり目な瞳に長い睫毛




それに軽くかかるクリーム色の髪




王子さまみたい・・・



「どうしたの?」

ずっと見つめていた私に彼が尋ねる


「い、いや、何でもないです」




恥ずかしい





すぐに赤くなる頬っぺたに手で風を送る




すると柔らかい、いい匂いがした




あ、




今日購買で売るお菓子、バナナシフォンだ



早く行かなきゃ
売り切れちゃう


私は風に乗るように立ち上がって足を踏み出した