過酷な残業の日々…。特に今日は遅くなって。
仕事でミスをしへこんで帰る道すがら…。





田舎は何もない。





夕暮れの空は美しい。
時間と大気が動いている。





稲もない田んぼ道のど真ん中で一人女干物は黄昏る。
本来なら危ないよと注意されているだろう。





だーれもいない。一台の小さな車に干物だけ。





空は太陽と月が両方ある…。そのうち星がたくさん。





この寒いのに車の外で寄りかかって見上げていた。




疲れが一時的にどっかに消える。
黄色のランタンはたぶんもうしまってる。





閉まってると解りきっていたのに車を走らせた。





だーれもいない。





鍵はかかっていない。
カランカラとベルがなる。





カウンターの奥からマスターが出てきた。
黙って席に案内。
カウンターで茶色に琥珀の液体がコポコポなる。




温かい一杯のコーヒー。




いつもの味じゃない。
優しいくて美味しかった。





「今日はあなたで最後です。」





「マスターあの…。これ?」





遠くを見ながら
「今日来る大切な人が来なくてね…。それは特別なコーヒーなんですよ。」





「おいしい…。」





「それはよかった。」





「あの…。」





「お代はいりません。今日は満月ですね。気をつけてお帰りください。」




微笑むマスターは奥に消えた。