太一は1時間遅れて来た。
マンションの前で座って待つ私は嬉しい気持ちを隠してムッと口を尖らせた。
「…遅い!!もうお腹空いて死にそう~」
「悪かったって!用意してたら紗夜香ちゃんから電話来てさ…」
ズキッと痛む私の胸。
「…そっか…。それは仕方ないね。デートの誘いだったんじゃないの?」
「ん…でも今日はアカリと先に約束してたから。」
そういう律義な所が太一っぽい。
「乗れよ。腹減ってんだろ?」
「うん!」
太一は自転車を走らせながら「旨いパスタを食わせてやる」と楽しそうに話していた。
私もそれに「デザートも食べていい?」なんて返したりして…。
夏休み以来なのに何も変わらない私達。
変わってない事にホッとした。