かと、思えば。


再びノックなしに扉がスライドして、少女がひょこっと顔を覗かせた。



「言い忘れてたんだけどさー」


「な、何を?」


「姫蝶が、『緋色の行動に注意しろ』だってさ」


「緋色・・・。アイツのことか?」



戒希の疑問に、知らなーい、と少女は笑いながら答えた。


本当に知らないのかと、再び問い掛けるよりも早く、少女は続けていった。



「伝言は伝えたから。そんじゃねー」



邪魔者は退散しますねー、などとも言って去っていった。なんともわからない人間である。



『緋色の行動に注意しろ』



不穏さを隠さない言葉に、戒希と桃華は繋がれた互いの手に力を込めた。


降り注ぐ雨の音が、何故か一際大きく聞こえた。