考えが甘かった、と彼は思った。


机を挟んだ向かいのソファーに座っている彼女は──姫蝶は、淀みのない獰猛な猛獣のような鋭い瞳を、彼に向けていた。



「その答えは、先の問いに相当する価値があるか」



そんな彼女からの問い掛けに、彼の背を伝うのは戦慄きか、恐怖の震えか。


彼は、威圧されているわけではない。彼女が纏う、王者の貫禄というものが、彼の本能を刺激しているからだ。


先程までの、友好的な笑顔を浮かべていた面影は、まるで感じられない。幻だったのかと、思うくらい。


二人だけのこの空間を、彼はやけに痛く感じていた。




遡ること十数分前──・・・。