side:凜華 漸く、目を覚ました。 どうやら私は、1ヶ月近く眠ったままだったらしい。先生──医者が、そう言っていた。 だけど、後遺症とかが無いか検査された。何だか、皆眉間に皺が寄っていた。 難しい問題を目の前にした時のような、難しい顔で何だか分からないが、変な感じがした。 私は、 「──記憶喪失のようです」 記憶喪失らしい。 目の前にいる銀髪の男が、悲しそうな表情をしたまま、私を見ていた。 だけど、私は彼のことを何も知らない。分からない。