時が経つのは早い。

気がつけば、ソウと別れて1ヶ月。
もう、3月が終わろうとしていた。



──あれ以来、ソウからの連絡は一度もない。


そして、私も。
一度もソウに電話していなかった。




都内全ての大学で今年度の入試日程が終了したということを、少し前のニュースで知った。

おそらくその結果だって、とっくに出ているはずだ。

それでもソウから何の連絡もないって言うことは、やっぱり駄目だったっていうことなのか……



このまま、二度とソウには会えないかも知れない。

ソウのことを信じているつもりでも、そんな不安が胸をよぎった。


だけど。

そんな不安を抱えながらも、私はいつもと変わらない日々を送っていた。


お昼までに起きて、バイトに行き、その帰りにウーさんのお店に顔を出す。

以前に比べると『ラーメン うちだ』に立ち寄るペースはかなり減ったが、それでも週に一度はウーさんの顔を見ながら、美味しいラーメンと酸っぱいキムチを食べた。


だけど、私にはもう、かつてのように髪を結ぶゴムは必要なかった。

ソウと別れた後日、私は多華子に付き添ってもらって美容院へ行き、腰まであった髪をバッサリと切った。

今は、襟に毛先がつくかつかないかの長さのショートレイヤー。
生まれて初めて挑戦したカラーリングで、真っ黒だった髪は明るい茶色に変わった。

髪の短くなった自分の顔を見ると、まるで別人のようで。

不思議なくらい気持ちが軽くなった。




──私のそばに、ソウはいない。

だけど私は、穏やかで、静かな毎日を送っていた。