「こうして電話もらえたら、腹立たしい気持ちも消えちゃったよ。……それよりミナさんは元気だった?」

「……うん」

「もう、泣いたりしてない?」

「……うん、大丈夫よ」

大丈夫。

それは、偽りのない気持ちのはずだった。

だけど、ソウの声を聞いた今、私は震える声を隠すのが精一杯で。

どうしてだろう? 気を抜くと、涙が出そうだった。

「私は……大丈夫だよ」

それはまるで自分に言い聞かせるように。
私は静かに繰り返した。


「ふーん、そうなんだ」

ソウの声は少し暗かった。

次に溜息が聞こえ、一呼吸置いてソウは不満げに言った。

「ミナさんって、案外タフだよね。俺はこの1週間、ずっと辛かったっていうのに」

「……どういうこと?」

「風邪もきつかったけど、それより失恋のショックから立ち直れてなくてね」

私の脳裏にリョーコちゃんの顔が浮かぶ。

そしてリョーコちゃんの口から出た、『他に好きな人が出来た』という言葉……。

ソウの失恋の相手って──


「リョーコちゃん……なんだよね?」