「お。今日は唐揚げじゃん!」
ヒロは食卓にのっている唐揚げに手を伸ばした。
「ダーメッ」
パッとヒロから離れて、ヒロの手を握る。
ちょっと怒り気味でヒロを見る。
「私に言うことあるでしょ!?」
「いただきますっ」
そう言ってまた唐揚げに伸ばす手をパチンと叩く。
「いてっ」
「んもう!ヒロの馬鹿ぁ」
私はキッとヒロを睨んで、ソファに座った。
「渚?」
私って、面倒くさい女。
こんなのヒロを困らせてるだけなのに。
「渚ぁ?」
ただの嫉妬、なんだ。
「渚ーっ」
私はアフレコ中のヒロを知らないから。
「渚ッ!!」
同じ現場にいる女の子がどれだけヒロを好きになっちゃうんだろ。
「な·ぎ·さ!」
テレビの前にいる女の子がどれだけヒロを好きになっちゃうんだろ。
――――私は何も知らない。