私はなぜかすぐにはお店の中に入れずに、そのまま慎の姿を眺めていた。

このまま、笑ってお店に入って「お待たせ!」って慎の隣に座れば、慎は何もなかったように笑ってくれるんじゃないか……

そんな錯覚に陥る。


慎が参考書から目を放し、小さく背伸びをして、周りを見回した。

窓の外に私の姿を見つけると、笑顔を作って手を挙げてくれたけど、その笑顔はぎこちなく強ばっていた。

……あぁ、これが現実なんだ。
私は一瞬にして現実に引き戻された。

私もぎこちない笑顔を返す。

お店のドアを開ける手が震えていた。


覚悟してたつもりだったし、
気持ちの整理はつけてきたはずなのに、



……逃げ出したい。

……誰か、助けて。


自分の心臓の音につぶされてしまいそうだ……。