「慎、深月……。あのな……」

先生は頼りなさげに話す。

「こういうのっておせっかいかもしれないけど、お前たち、ちゃんと話し合ったほうがいいと思うぞ」

私は思わず先生から目をそらしてしまった。

「実際、この前の合奏なんて聴けたもんじゃなかったし、周りの部員もお前たちのことを腫れ物に触るみたいに気を使ってるし……。今みたいに中途半端なままだと、前に進めないっていうか……」

「……てますよ……」

滝田先生の話をさえぎって、ずっと動きのなかった慎がようやく口を開いた。

「ん? なんだ?」

滝田先生が聞き返す。それくらい、慎の声は小さかった。

「そんなこと、分かってますよ!」

慎が立ち上がって滝田先生をにらみつける。

「慎……?」

「ケジメつけなきゃいけないのは分かってるけど……そんなに簡単じゃないんですよ……。でも、こんなことになるくらいだったら……」

慎は私のほうを向いて言った。

「深月、明日時間作れる?……っていうか、作って?」