「なあ、深月。俺、もうこれ以上、あの単細胞のこと抑えられねーわ。ごめんな」

単細胞……陽人のことだ。

ヤマタロは、滝田先生や遠巻きに様子を見ていた部員たちに
「すいませんでしたー」
「ごめんねー」
といいながら、部室を出て行った。

でも、その後も、気まずい沈黙が続いた。

まだ、部室の中を不快な緊張が支配していて、誰も動こうとしない。
ただ、エリナのすすり泣く声だけが聞こえていた。


その緊張の糸を切ったのは滝田先生だった。

「あーあ。今日は解散するか」

ため息まじりに言う。

「よし、解散だ! 今日は練習休みー」

その声に、部員たちが安堵の表情とともに動きを取り戻す。

1人、また1人と、部室から人がいなくなった。


そして、まだ泣いているエリナが両脇を友達に支えられながら部室をあとにすると、残っているのは滝田先生と慎と私の3人だけになった。