黄色い声がいっそう大きくなる中、ヤマタロはバットを振った。

そして、それと同時にカーンという音が響き、ボールは地を這うように低くピッチャーの横をすり抜けた。

ヤマタロがファーストに向かって走り出す。

「いけーっ!」

拳を振り回して叫ぶチョコの横で、私もヤマタロの名前を夢中で叫んだ。


ヤマタロ……がんばれっっ!


ショートがグローブを低く構えて、ボールめがけて走り込んでくる。

そして、ボールを捕ったかと思うとすぐに、1塁めがけて投げた。

ファーストは、すでに万全の体制でグローブを構えている。


「ヤマタロ!」


頑張って!
早く!


次の瞬間。

ヤマタロは、両手を前に出して、頭から1塁ベースめがけてヘッドスライディングした。




「セーフ!」




山室先生の大きな声。

体育の授業とは思えないほど大きな歓声がおこるなか、その間にホームベースに帰還した陽人が1塁へ駆け寄っていく。

砂埃が舞う1塁ベース。

ヤマタロは、すぐには起き上がらず、仰向けになって大の字に手足を広げていた。

遠目からもよく分かる、無邪気な笑顔で……。