「ねえ、チョコ」

私はバッターボックスのヤマタロを見ながら、言った。

「なに?」

「ヤマタロって、こんなに我慢強かった?」


7球目も、また、ファウル。

3塁ベース上で陽人が何か叫んでいた。
多分「早く打てー!」って言うことだろう。

だけどヤマタロは変わらず落ち着いていて、陽人に軽く手をあげて応えると再び静かにピッチャーと対峙した。

「うーん、私も意外だなぁ。ヤマタロって、こんなのめんどくせーって、適当に終わらせそうなのにね!」

そう。

それが、ヤマタロのイメージなのに。


「……でも私、今ならちょっと分かるよ」

そう、チョコが続けて言った。

「え?」

「実は内面に熱い想いを秘めてるって感じ?」


そして。
ピッチャーが8球目を投げた。