私は震える声で慎に尋ねた。

「……いつから、陽人たちのことを、そんな風に思ってたの?」

もう、きっかけとなったケンカのことなんて、どうでもよくなっていた。

「……最初からだよ」

ため息をついて、慎が言った。

「夜遅くに電話したら深月が相馬の家にいたり、土日にチョコちゃんだけじゃなくて相馬や山野上とも遊びに行ったり……そういうのがイヤだったんだよ」

「でも、それは……!」

言いたいことはたくさんあった。

でも、どうしてだろう。

喉の奥に何かがつかえているみたいで、どんなに頑張っても言葉にならなかった。

(陽人は兄弟みたいなもので、家族ぐるみのつきあいをしてるから、よくご飯を一緒に食べるんだよ)

(確かに4人で遊びに行くこともあるけど、でも、慎をないがしろにしたことは一度もないよ? いつだって慎との用事を優先させてきたじゃない)


……こんなこと、言っても無駄だ。


言わなくても、慎は知っている。

知っていて、それでも納得できないんだから。


「そういうの全部ひっくるめて、深月のことを好きになれると思ったんだけど……」

一度ゴクリと唾を飲み込んで、慎は続けた。

「……でも、やっぱり、俺はそんなに強い人間じゃない」


「だったらそう言ってくれればよかったのに!」

声を振り絞って言いながら慎を見ると、慎は怖くなるくらい無表情だった。


「ああ、そうだね」