一度あふれた涙は、目を閉じても止まらない。

涙の粒は次々と、目尻からこめかみに伝わり、そのまま耳をなぞって枕に吸い込まれていった。

仰向けになっていてよかった。

もしも下を向いていたら、私の携帯は間違いなく涙で濡れてしまっていただろう。


携帯の画面は、あふれる涙でぼやけてよく見えない。

だけど私は、“オレ”に、メールを送り続けた。


2人で期末試験の勉強をした図書館で初めてキスしたこと。

慎の家に遊びに行って、緊張しながら慎のお母さんに挨拶したこと。

クリスマスに、指輪をもらったこと。

年が変わる瞬間を、2人でひとつのベッドで迎えたこと。

春になって進級して、一緒の大学に行こうねって約束したこと。

また夏が来て、つきあい始めてちょうど1年の記念日に、学校をサボってデートしたこと。

来年も、またデートしようねって約束したこと。


「う……っ……」

思わず声が出る。


ずっと、
ずっと、

好きだって、
別れたくないって、
思ってた。


でも、言葉に出すのが怖かった。


別れの時がやってきたら、

その事実を受け入れられなくて、

自分を見失ってしまいそうだった。


だから、そんな気持ちを封印して、

自分をごまかして、


私は必死に踏ん張っていたんだ。