□
自分の両親のような平凡すぎる関係か、ソウマとハルコのような、無言でも分かり合っているような関係か。
でも。
自分たちがこの家で、どんな夫婦になればいいのか、まったく想像できなかったのである。
『結婚!』というものだけを目標に、今日のカイトは突っ走り、それが達成されてしまったのだ。
先のことまでじっくり考えていなかった。
これで、一緒に生活が出来る。
そう、生活がやってくるのだ。
「んなこと…すんな」
抱きしめたまま、メイにそう言った。
買い物の件である。
彼らは、結婚したばかりなのだ。
しかも、思いは昨日確かめ合ったばかりで――まだ、それが完全に身体の中に吸収されきっていないのである。
それなのに、『じゃあ、夫婦としての生活をスタートさせてください』、と言われても、うまく出来るはずなどないのだ。
「で、でも…買い物をしないと、夕ご飯も…明日の朝ご飯も、何も作れないから…」
おろおろした声が、胸の中から聞こえてくる。
彼女の口から、『明日』という文字が出た。
そして、それを激しく実感出来たのである。
メイと一緒に始まる明日が、ちゃんと存在するのだと。
彼女も分かっているのだと。
そっと腕を解いた。
「行くぞ…」
カイトは、そう言った。
買い物なら一緒にでかければ済むことだ。
彼の車があれば、きっとメイが重くて大変なことにはならないだろう。
自分が一緒なら、黙って迷わせたりするはずもなかった。
「え? え?」
意味が分からなかったのだろう。
さっさと出ていこうとするカイトの後を、驚いた声でついてくるメイ。
カイトだって、自分が信じられなかった。
食事の買い物なのである。
カイトが。
女と一緒に、スーパーに行くというのだ。
そんなことを、自分からするようになるとは思ってもみなかった。
自分の両親のような平凡すぎる関係か、ソウマとハルコのような、無言でも分かり合っているような関係か。
でも。
自分たちがこの家で、どんな夫婦になればいいのか、まったく想像できなかったのである。
『結婚!』というものだけを目標に、今日のカイトは突っ走り、それが達成されてしまったのだ。
先のことまでじっくり考えていなかった。
これで、一緒に生活が出来る。
そう、生活がやってくるのだ。
「んなこと…すんな」
抱きしめたまま、メイにそう言った。
買い物の件である。
彼らは、結婚したばかりなのだ。
しかも、思いは昨日確かめ合ったばかりで――まだ、それが完全に身体の中に吸収されきっていないのである。
それなのに、『じゃあ、夫婦としての生活をスタートさせてください』、と言われても、うまく出来るはずなどないのだ。
「で、でも…買い物をしないと、夕ご飯も…明日の朝ご飯も、何も作れないから…」
おろおろした声が、胸の中から聞こえてくる。
彼女の口から、『明日』という文字が出た。
そして、それを激しく実感出来たのである。
メイと一緒に始まる明日が、ちゃんと存在するのだと。
彼女も分かっているのだと。
そっと腕を解いた。
「行くぞ…」
カイトは、そう言った。
買い物なら一緒にでかければ済むことだ。
彼の車があれば、きっとメイが重くて大変なことにはならないだろう。
自分が一緒なら、黙って迷わせたりするはずもなかった。
「え? え?」
意味が分からなかったのだろう。
さっさと出ていこうとするカイトの後を、驚いた声でついてくるメイ。
カイトだって、自分が信じられなかった。
食事の買い物なのである。
カイトが。
女と一緒に、スーパーに行くというのだ。
そんなことを、自分からするようになるとは思ってもみなかった。


