冬うらら~猫と起爆スイッチ~

□188
 もう、一瞬だって我慢できなかった。

 これ以上、役所の職員なんかにいちゃもんをつけられたら、カイトの神経はすべて弾け飛びそうだったのだ。

 だから、それを窓口に叩き付けるなり、彼は踵を返した。

 ぎゅっとメイの手を握りしめたまま、車に駆け戻ったのである。

 そして、彼女を車の中に押し込むと――とにかく、家路を目指した。

 身体中の血が騒いでいるのが分かる。

 ついに。

 ようやく。

 やっと。

 彼女との婚姻関係が成立したのだ。

 これで、社会的にメイはカイトのものになった、ということである。

 その事実に、身体が震えそうだった。

 途中、何度も彼女の気持ちが心配になった。

 自分だけが、突っ走っている気持ちにさせられた。

 でも、譲れなかったのだ。

 絶対にもう、二度と離れていたくなかったのである。

 強引なのは、百も承知だ。

 しかし――これで、彼女と同じ家で生活をするのも、抱きしめるのも、咎められることなどない。

 その権利を、ようやくカイトは手にしたのだった。

 そして。

 ついに、彼女をあの家に連れ戻すことが出来たのである。